“You either love it or hate it”
“好きになるか、嫌いになるかのどちらかだ。”
この言葉は「ラフロイグ」というウイスキーのキャッチコピーなのですが、
コーヒー界のラフロイグといえば…
私は「ケニア」と答えます。
ではなぜ万人受けするような豆ではないのか、それはケニアの豆のある2つの特徴に起因していると思います。
1.環境由来の特徴的な酸
2.トマトの香り
1.環境由来の特徴的な酸の正体とは。
ケニアの土地は火山性土壌。リン酸を多く含みます。
そのリン酸を吸い上げ、保持できる品種(SL系、バディアン、ルイル11)のために、通常のコーヒーより酸が強いのです。
ケニア=酸っぱい=Love or Hate=ラフロイグ
つまりケニア=ラフロイグ。
ここですこし上級者向けな話を。
大切なのは、リン酸は無機酸であるがゆえに、フルーティーな味とは結びつかないということ。
有機酸は作物が成熟する過程で生まれる酸。
無機酸はそれ以外の酸。
厳密にはCを含むか否かなのですが。。
無機酸は単に酸が強まるだけ。
クエン酸に甘さが加わればレモンを想起させるフルーティーな酸味になりますが、リン酸に甘さを加えても何のフルーツも連想されません。
私は実際にリン酸(95%の水溶液)水に砂糖を溶かしたものとクエン酸水に砂糖を溶かしたものを飲みましたが、上記は確かでした。
美味しい、フルーティーなケニアには、恵まれた土壌や品種のお陰だけでなく、コーヒーの実がしっかり熟すことが必要不可欠なのです。
2.トマトの香り
ケニアといえば何といってもこのトマトの香りでしょう。
上述の酸質も相まって、とてもジューシーに感じます。
コーヒーからトマト感じて、美味しいのかと思われるかと思いますが、これがはっきり好み分かれるんですよね。。。
もちろん私は大好きです。
ここでも上級者向けのお話を。。
調べてみたところ、トマトの香りの一例は成分は下記で
・野菜らしい香りの「ヘキセナール」「ヘキセノール」
・土の香りの「2-イソブチルアゾール」
・花の香りの「ベンジルシアニド」
・熟したフルーツ香の「イソバリルメチルチオマテ」
このうち、フルーツ香のイソバリルメチルチオマテはそれ単体を調べても出てきませんでした。
ただ、これらの情報から分かることは...
トマトフレーバー=草+土+花+果実
ということです。
これらの組み合わせはコーヒーでは明らかに存在するもので、この組み合わせの比重の違いで"青々しいトマト"なのか"フルーツトマト"と感じるのか変わってきているんでしょうね。
今回使わせてもらっているケニアは花の香りが特に強く、時点でフルーツ香なので、フルーツトマトが連想されるのかなと思います。
さてさて、ここまでかなりボリューミーな内容でしたので、焙煎については軽く触れようかと思います。
まず、
水分多いしでかいし硬いなぁ
という印象です。
投入する温度を225度と高めに設定し、水分蒸発が落ち着く温度帯になったところで火力をかなり落とします。
熱伝達をベースにメイラード反応を進めることで、ボディを抑えて明るく仕上げます。
最後のカラメル化のフェーズにおいても、190度以降のフェーズにならない温度帯で仕上げることで、ブラウンシュガーやハニー止まりに。
明るく、フルーティーな、野菜感少なめのケニアに仕上げました。
水出しも美味しいです。ぜひお試しください。